ダチョウの卵を原料にした化粧品があると聞いて、驚いたのですが、そこに至った経緯を調べたところが、とても面白かったので、紹介したいと思います。
さて、なぜダチョウの卵なの?というのが正直な印象でした。
調べてみると、やはりその大きさと生命力がカギ関係していました。大きなダチョウの卵から、抗体を取り出すことに成功したことから、大きな産業に発展したのです。
ところで、抗体とは、ウイルスや細菌に対して非常に高い効果があり、しかも「副作用がない」という、今後医療分野では最も主流になっていくと言われているタンパク質の一種(ワクチンも抗体の一つ)です。
抗体は、ダチョウの卵から生成される前には、ニワトリの卵(卵黄抽出)やネズミなどの血清からごく少量ずつしか抽出できなかったため、「抗体1グラムあたり数億円」と非常に高価な原料だったそうです。
でも、ダチョウの卵で生成する事により、抗体を大量に生産する事が可能になったわけです。
このサクセスストーリーの発端とは?
なんと、もやし!
元々、もやしの製造販売をしていた方が、毎日2トンも出る出来損ない売り物にならないもやしを処理するのに年間1000万円以上の費用を使っていて、大きな負担だったそうです。
その処理するしかなかったもやしを、食べる家畜はいないかと探したところ、ダチョウがマメ科の植物を食べるとわかり、ダチョウ牧場を始めたのだそうです。
ところが、ダチョウは皮も肉も、卵も、売れない。次第に重荷になっていったそうです。
その牧場の主治医で博士でもある方が、この大きくて頑丈な鳥を観察しているうちに、抗体をとることを思いついたそうです。
そして、ダチョウを追いかけ、卵の殻と格闘して、やっと純度の高い抗体の入手に成功したのが2005年。
それまで、マウスやウサギなどの小動物からつくられる抗体の価格は、グラム数億円。これに対してダチョウ1個の卵からつくれる抗体は約4グラム。価格は1/1000~1/4000以下になって、抗体の用途が飛躍的に拡大したといいます。
そして、今まで1個4000円前後で取引されていたダチョウの卵が100倍の価値を持つようになった。
面白い話ですよね。
ダチョウ卵黄抽出液が、化粧品に利用された理由は、以下の性質があったため。
・肌の常在菌のバランスを調整
・痒みの誘発を防ぐ
・敏感肌やダメージ肌の原因菌である黄色ブドウ球菌のみを吸着する
それで、アトピーや花粉症対策用の化粧品を製造する会社が立ち上がり、アトピー用化粧品の発売を開始 したとか。
ちなみに、この抗体を使った製品は、化粧品のほか、抗体マスクや抗体フィルタ(含エアコンフィルタ) も、開発されているそうです。
抗体マスクの目的は、インフルエンザ予防
抗体フィルタにおいては、 富士フィルム2010年の冬からは日立アプライアンスが空気清浄機に利用、タイガー魔法瓶は抗体フィルター付き加湿器を発売 しています。
ウイルスや細菌の感染を抑制して、予防や除去に生かされています。
今は、抗体入りの調味料もあるらしいです。
今後は、ニキビ対策、ガン対策、HIV対策にもダチョウ抗体が医学的な効力を発揮するだろうと、開発者はかんがえているそうです。
発端は、余ったもやしの処理に窮した一人の社長の大失敗から生まれたダチョウ産業。
こういう話は、興味深く楽しいですね。