抗酸化物質はがんの進行を高める危険があるのではと、警鐘を鳴らしているのは、
英国ロンドンのKing’s CollegeにあるLabTumour Plasticity Labというイギリスの研究室。
キングス・カレッジ・ロンドンは、イングランドでは4番目に古い大学で、過去に12名のノーベル賞受賞者を輩出して名門です。
出元が、こんな名門大学のラボということなので、気になったんです。「フリーラジカルが人体に及ぼす良い影響についての研究」
この研究は、がん治療や予防に抗酸化物質が好影響をもたらすのか、という疑問の答えを求めたもの…
がん治療や予防に抗酸化物質が好影響をもたらすのか
それによって、意外な調査データが出ました。
以前、2008年に発表された、黒色腫(メラノーマ)細胞の形成や増殖に関する調査論文では、
メラノーマ細胞は、分子ファミリーのなかでも「RAC」と「Rho」という2種類の相反する構成の比率で形を変えていくことが明らかにされ、
メラノーマ細胞内のRACが多くなり、Rhoが少なくなると、細長く紡錘形に細胞が形作られ、RACが少なくなり、
Rhoが増えると、メラノーマ細胞は球状に変化していき、体内での移動が容易になることから、皮膚がんの進行速度がアップしていくという結果になりました。
そして、2015年には、メラノーマ細胞を培養し、抗酸化物質を投与する実験が行われました。
研究所内でメラノーマ細胞を培養し、抗酸化物質を投与してみました。すると、メラノーマ細胞は球状への変化を強め、がんの進行速度を高めかねないことが判明し、
一方、Rhoを弱め、RACを増産させる効果のある薬物を投与したところ、メラノーマ細胞内のフリーラジカルが増えて、細胞は細長い紡錘形に変化。球形状とは異なり、皮膚がんの進行速度を遅らせることに貢献する作用が確認
この研究に関しては、フリーラジカル作用がプラスに働いていることが実証された
研究チームがこの実験によって、導き出したこたえは、
すでに皮膚がんを患っている人が、抗酸化剤のサプリメントなどを摂取し、
フリーラジカルの作用を減弱させようとすれば、
かえって皮膚がんの進行を速めてしまう危険性あり
この研究が意味すること
このほかにも、ネットで検索すると、抗酸化物質の効果を実証する実験がは数多く行われていますが、その実験の前提にあるのは、
フリーラジカルを減らす=病気を予防、病気を治す
でも、その前提が、もし間違っていたら?
今回の実験では、その前提そのものを覆す結果になってしまったということですね。
活性酸素の発生は、本来身体に備わったシステム
言われてみれば、人間の体の中の自然に発生するフリーラジカルが、完全に悪者であるはずではありません。
しかし、想定(神様?)以上に地球の環境(空気や水や、食べ物、紫外線)が悪化し、人間の体への刺激が大きくなったために、フリーラジカルが多く生産されるようになってしまったのだと思います。
多くなりすぎたフリーラジカルから、身体を守るために、抗酸化物質が必要になったんだよね。
だから、よい環境で、良い水、良い食べ物を食し、ストレスの少ない暮らしをして居る人(そんな生活は夢?)には、抗酸化物質などいらないということになります。
抗酸化物質の効果は絶対ではない?
はじめて、抗酸化食品についての本を読んだとき、抗酸化食品で、たいがいの病気は回復に向かうと書いてありました。
そのように信じている人が、がんになった身内や友人に、せっせと抗酸化物質を飲ませたら、どうなるでしょうか。
癌の治療で、発生したフリーラジカルが、がん細胞を攻撃してがんを直そうとしているのに、そのフリーラジカルをサプリメントで消滅させてしまっていたら?
それは、とても危険なことですね。
抗酸化物質を摂るのは、フリーラジカルおよび酸化ストレスに関連して起きるといわれている、様々な疾患から身体を守るものです。
以下は、フリーラジカルおよび酸化ストレスに関連して起きるといわれている疾患
- アレルギー
- アルツハイマー病
- 筋萎縮性側索硬化症
- ガン(膀胱、胸部、頸部、結腸直腸、転移性肺悪性黒色腫、卵巣/子宮内膜、前立腺、胃、上気道消化管)
- 心臓血管疾患
- 白内障
- 嚢胞性線維症
- 糖尿病
- 糖尿病性神経症
- 緑内障
- ハンチントン病
- 黄斑変性症
- 多発性硬化症
- 筋ジストロフィー
- 膵炎
- パーキンソン病
- リウマチ性関節炎および他の炎症性疾患
- 統合失調症
- 脳梗塞
- 遅発性ジスキネジア
でも、治療にあたっては、フリーラジカルを敵視すべきではないのかもしれないんですね。
私のような健康オタクは、こういう研究で一喜一憂してしまうんです。
とりあえず、がんの治療中は、自分勝手にサプリメントを取らないほうがよさそうですね。